佐々木 みゆき
早稲田大学教育・総合科学学術院 教授
第二言語習得論、言語評価論
私の研究テーマは、「日本人英語学習者の英語を書く力はどのような能力で成り立っているか」というwhat(能力論)の問題から、「日本人学習者はどのように英語を書くのか」のhow(方略論)の問題、さらに「書く際の方略は長期的にどのように変化するのか」の調査結果をもとに、「なぜそのように変化するのか」のwhy(社会文化的動機づけ論)の問題に 変化してきました。その間、論文を書くときの理論的枠組みも、量的 研究者として訓練を受けた大学院生時代の実証主義から、「学ぶことの背景には学習者の歴史と環境がある」という、社会文化的なアプローチをとるポスト実証主義へ変化してきました。
「第二言語で書く」という行為をめぐって、「書く人」の背景ももちろんですが、私は、それを「評価する人」にも大変興味があります。「評価する人」もまた、その人の歴史と環境を背負って書かれたものを読むのだと思えば、「評価する」行為には、書いた人と読む人の信念のぶつかりあいのようなものが生じているはずです。また、書く人も、書くときに、「どんな人が読むのか」想像している場合は、頭の中で、この「ぶつかりあい」が起こっていることでしょう。
このように考えると、「第二言語ライティング」や「言語評価」の分野には、おもしろそうな未解決の問題がまだまだたくさんありそうな気がします。